マンション経営といえばオーナー自身の利益をどのようにして追求するのかに焦点が当てられがちですが、マンションの入居者の立場からの視点も忘れてはならないところです。新社会人や学生などのターゲット層から見た魅力に乏しい物件では、いずれ空室率が高まり、経営に行き詰まってしまうことは必至といえます。そのためオーナーの立場は堅持しつつ、一方では入居者視点での魅力を最大限に高める努力をすることが、結果としては経営の成功につながる近道です。
そこで考えるべき点は多々ありますが、最近では敷金や礼金をゼロに設定して初期費用の負担を軽減するサービスを行っている物件も見かけるようになりました。これは入居者にとってはもちろんメリットにほかなりませんが、反対に経営を圧迫する要素にもなりますので、上手に使いこなすことが重要です。
入居者から見たゼロゼロ物件の魅力
わが国の賃貸マンションでは、伝統的に契約の時点でいわゆる前家賃のほかにも敷金と礼金とを徴収することが慣例になっています。礼金は本来はオーナーに対する儀礼的な金銭の交付でしたが、現在では家賃と同じく金額が固定化されています。
敷金は原状回復や家賃滞納などの際に差し引くことができるようにオーナーの預かり金として徴収されるもので、差し引く必要がなければ退去時にはもとの入居者に返還されます。これらは地域によって相場が異なるものの、毎月の家賃の数倍の金額になることから、契約の際の初期費用の負担は膨大となります。
もしも最初からこの部分がゼロに設定されている、いわゆるゼロゼロ物件の場合には、他の物件と比較して数万円規模でのメリットが生まれるため、入居を正式に決断する大きな要素となります。
オーナー側から見たゼロゼロ物件のリスクと対策
このように敷金や礼金を徴収しないゼロゼロ物件は入居者にとってのメリットが大きく、オーナーにとっても空室リスクを回避する切り札となりますが、一方ではマンション経営をする上でのデメリットも存在しています。たとえば入居者が家賃を滞納したり、故意にアパートを損傷させるなどして原状回復の義務が生じた場合、敷金があればそこから修繕費用を差し引くことができます。
しかしゼロゼロ物件では敷金がない以上、あらためてその都度請求せざるを得ず、高額な場合は確実に支払ってもらえる保証はありません。最近ではリスク対策として家賃保証が付いたサブリース契約を提供する民間のマンション管理会社なども現れており、このようなしくみを活用して、入居者とオーナーの双方にメリットがあるゼロゼロ物件を生み出すことが可能となりました。